夏の始まりに測り直す、自分という器

夏の始まりに測り直す、自分という器

立ち止まる時間がくれる気づき

いよいよ本格的な夏の始まり。
手帳に日付を書き込みながら、
「今年の夏はどう過ごそうか」と
心の奥で静かに決意を立てる。

この時間は、私にとって自分を整えるための儀式のようなもの。
日々を駆け抜ける中で、立ち止まって息を整えるための場所だ。

手帳のページには、
子どもたちと庭に出したビニールプールの記録。
去年のものを膨らませながら、ふと感じた。
「あれ、なんだか小さくなった?」

小学2年生と5年生になった子どもたち。
成長のスピードは、時に私の想像を軽々と超えていく。
去年までは十分だったプールが、
もう少し手狭に見える。
その光景が、私の心に一つの問いを投げかけてきた。

「小さくなった」のは、プールだけじゃない

もしかして——
私自身の心の器も、
知らぬ間に小さくなってしまっていたのではないだろうか。

仕事、家事、子育て。
日々の“役割”をきちんとこなすことに意識を向けすぎて、
「いつもの私」や「誰かの期待に応える私」という枠の中で、
自分を締めつけていた気がする。

去年のプールに空気を入れながら、
少しずつ抜けていく音を聞いていた。
それはまるで、
無理をして膨らませていた“理想の私”が、
ようやく空気を抜いて
本来の形に戻ろうとしているようにも感じた。

子どもが成長するように、
私たち大人もまた、更新が必要なのだと思う。
なのに私たちは、
過去の自分の型や、世間の価値観に
合わせたまま動こうとしてしまう。

手帳に正直な気持ちを書き出したとき、
初めて“心のサイズ”に気づけた。
この気づきこそが、手帳と暮らす時間のいちばんの恩恵だと思う。

周りよりも、自分に正直であること

その日の手帳には、気になった英語のステッカーを貼った。

WHAT YOU THINK OF YOURSELF IS A LOT MORE IMPORTANT
THAN WHAT OTHER PEOPLE THINK OF YOU.

「あなたが自分をどう思うかは、
他人があなたをどう思うかよりもずっと大切。」

40代を迎えたいま、この言葉が
ひときわ心に響く。

新しいプールを買うとき、
私たちは「自動で膨らむ大型タイプ」ではなく、
昔ながらの、手で膨らませるタイプを選んだ。

手間はかかる。
水を入れるのも片づけるのも少し大変。
けれどその“手間”の中にこそ、
人間らしい時間がある気がした。

仕事で効率を追いかける日々だからこそ、
生活では“あえて不便”を選びたい。
誰かのおすすめや流行より、
わが家にとって心地いいサイズを選びたい。

「もっと手軽な方がいいのに」と言われてもかまわない。
大切なのは、
そのプールのまわりで笑っている家族の顔と、
その時間を「いいな」と思える自分の気持ち。

ちょうど良い“私のサイズ”で生きる

無理に大きな器を装わないこと。
誰かの期待に合わせて、自分を小さく押し込めないこと。

今の私が心地よく呼吸できる
“ちょうどいいサイズ”のままで、この夏を生きたい。

40代という人生の折り返し地点。
「小さくなったもの」と「大きく受け止めるべきもの」が、
日常の中に並んでいる。

そのバランスを見つめ直すことが、
きっと、これからの自分を軽やかにしていく。

周りの評価よりも、
自分への正直な気持ちを大切に。

手帳のページをめくりながら、
私はまた新しい夏の決意を立てた。

今日も小さな養生を。

Wrote this article この記事を書いた人

ミカ

手帳と暮らすミカです。 薬剤師・和漢薬膳師として、心と体の「めぐり」を見つめながら暮らしています。 40代を迎え、心や体の声に耳を澄ます日々。 手帳を開く時間は、私にとって小さな養生であり、静かな儀式です。 ここでは、ほぼ日手帳に綴る日々の出来事や心の揺れを通して、 「人間らしく生きる」ためのヒントを探しています。

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