在宅勤務で気づかないうちに溜まる疲労。40代主婦が「見えない部分」を休めるためのヒント。

在宅勤務で気づかないうちに溜まる疲労。40代主婦が「見えない部分」を休めるためのヒント。

「少し疲れてしまった」と手帳に綴った夜

手帳の片隅に書かれた一文。

「少し疲れてしまったので、来月は有給を何日か取ろうと思う。」

たったこれだけの言葉なのに、
そこには在宅勤務という環境の中で、
気づかぬうちに蓄積された疲れの色がにじんでいた。

家事や育児の“忙しさ”とは違う。
もっと静かで、もっと深く沁み込むような疲れ。
体ではなく、心の奥のほうがすり減っていく感覚。

通勤がなく、家で仕事が完結する便利さ。
それでも、なぜこんなにも疲れているのだろう。
その答えを、私は手帳に向かいながら少しずつ探していた。

「便利さ」の裏に潜む、静かな消耗

朝起きてすぐパソコンを開き、
昼休みに洗濯機を回し、
仕事の合間に子どものプリントをチェックする。

終業と同時にキッチンへ移動し、夕食の支度。
仕事と家事の境界線は、とうに溶けてしまっている。

在宅勤務の良さは、“効率”にあると思っていた。
でも今は、その効率が心を追い詰めている気がする。

たとえば、会社での雑談。
電車に揺られながらぼんやりする時間。
そうした“無駄な時間”の中に、
私の心はこっそり休息を見つけていたのかもしれない。

便利なはずの在宅勤務は、
実は「休む間を奪う働き方」だったのだ。

見えない疲れを認める勇気

40代の私たちは、家庭の舵取りも担っている。
仕事ではロジカルに考え、
家事では段取りよく動き、
子どもには穏やかに寄り添う。

この“複数の役割”を、
一つの空間で切り替え続けていること。
それこそが、見えない疲労の正体なのだと思う。

疲れていることを口に出すのは、少し勇気がいる。
「まだ頑張れる」「大したことない」と自分に言い聞かせ、
限界を押し広げてしまう。

でも、手帳に書いた「少し疲れた」という一文は、
本音の小さなサインだった。
それを見逃さずにいたい。

「休む」ことは、弱さではなく自己肯定

その日、手帳にこうも書いた。

「有給を取って、仕事から離れることで見えることもある。
近すぎて、見えなくなっている部分がきっとある。」

同じ景色の中で、同じタスクを繰り返す日々。
いつのまにか、自分の心の状態が
“近すぎて見えなくなる”瞬間がある。

タスクをこなす手は動いていても、
心は置き去りになっている。

40代になってから、
「頑張る」だけでは回らなくなった。
体力も気力も、以前のようにはいかない。
それを認めることは、少し寂しいけれど、
本当はとても大切なことなのだと思う。

「休む」という行為は、
ただ仕事を離れることではない。
「私は今、休息を必要としている」と
自分の不調をきちんと受け止める行為だ。

頑張りすぎた自分を責めるのではなく、
頑張ったからこそ休む権利がある。
その自覚こそが、
“自分を大切にする力”だと思う。

「休み方」のモデルがない私たちへ

有給を取ると決めても、
頭をよぎるのは家事と育児の現実。
「休んでも結局、家で働いてる気がする」
そんな声が聞こえてきそうだ。

たしかに、家の中での休息はむずかしい。
「ママ、あれどこ?」「これやって」と呼ばれれば、
すぐに現実に引き戻されてしまう。

だから私は、日常の“役割”ごと離れてみようと思った。
家族との小旅行でもいい。
半日だけ一人で外に出るのでもいい。
それだけで、呼吸が変わる。

“休む”とは、
心と体を今いる場所から一歩離すこと。
そうして初めて、見えなかった疲れが見えてくる。

手帳に「空白」を書き込む

この夏、有給を取るページに、
私はあえて予定を書き込まなかった。

そこには「何もしない時間」とだけ記した。

予定のないその空白が、
私にとっていちばん大切な約束になる。

心も体も、仕事から離れ、
“誰のためでもない時間”を過ごす。
それが、私にとっての養生。

AIやデジタルがどれだけ進化しても、
人の心と体は、アナログのままだ。
だからこそ、
リセットの仕方も、アナログでいい。

手帳を開き、予定の隣に、
小さく“休む”と書き込む。
それだけで、少し肩の力が抜ける気がする。

休む勇気。
それは、自分をもう一度大切にするための合図。

今日も小さな養生を。

Wrote this article この記事を書いた人

ミカ

手帳と暮らすミカです。 薬剤師・和漢薬膳師として、心と体の「めぐり」を見つめながら暮らしています。 40代を迎え、心や体の声に耳を澄ます日々。 手帳を開く時間は、私にとって小さな養生であり、静かな儀式です。 ここでは、ほぼ日手帳に綴る日々の出来事や心の揺れを通して、 「人間らしく生きる」ためのヒントを探しています。

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