
予想外のときめきが届いた日
マスキングテープの40本セットが届いた。
注文したときは、どんな柄が入っているのか分からない“お楽しみセット”だったから、
封を開ける瞬間はまるで福袋を開けるような気分だった。
色とりどりのテープがぎっしりと詰まっていて、
少し光沢のあるもの、落ち着いたトーンのもの、
花柄、切手柄、アンティーク調、そして無地のベーシックなものまで。
自分ではきっと選ばないようなものが多くて、
ひとつひとつ手に取るたびに「こんなのもいいな」と思えてくる。
届いた中で特に気に入ったのは、ハロウィン柄だった。
オレンジの魔女と、黒い「Halloween」のロゴ。
季節もののマステはほとんど持っていなかったから、
その鮮やかな色合いがなんだか新鮮に映った。
光にかざすと、テープの端がほんのり透けて見える。
その薄さが好きだ。
貼るたびに、空気のように紙に馴染んでいく。
わずか1センチの幅に、こんなにも世界があるなんて。

マステを貼る時間は、自分と向き合う時間
手帳にマステを貼る時間は、私にとって“自分と向き合う時間”でもある。
静かな朝、コーヒーの香りが部屋に漂う中で、
昨日の出来事や、心に引っかかった言葉を手帳に綴る。
その余白に、ひとすじのマステを貼る。
ただそれだけの行為なのに、
不思議と心が整っていく。
「かわいい」と思う気持ちや、
「この色が今の気分にぴったり」と感じる瞬間には、
自分の心が素直に顔を出している。
マステはその“心の色”を紙の上に映し出す小さなツールなのだと思う。
毎日の手帳時間は、私にとって小さな養生のようなもの。
言葉にできない感情を、マステの色と形で表現する。
それが、疲れた心を少しずつ癒やしてくれる。
方眼ノートに広がる、旅のかけらたち
最近、新しい方眼ノートをお出かけの記録ノートにした。
手帳に書ききれなかった出来事を、そこに書き留めている。
旅のこと、季節の風景、食べたもの、心に残った会話。
そのページにも、この新しいマステたちを使ってみようと思っている。
旅先でもらったレシートの端に貼るだけで、
あの日の空気がふっと蘇る気がする。
ハロウィン柄のマステは、秋のページに似合いそうだ。
オレンジ色の魔女が、ページの隅でひっそりと踊るように。
黒いロゴの直線が、文のリズムを少し引き締めてくれる。
太いテープには、落ち着いた花柄を。
細いテープは、ページの余白にリズムをつけるように。
ランダムに届いたものたちが、
不思議とどのページにも居場所を見つけていく。
紙とテープのあいだには、
言葉では届かない「やさしさの層」のようなものがある。
貼るたびに、自分の中の静けさが整っていく。
無駄じゃないものなんて、ひとつもない
40本もあると、「こんなに使い切れるのかな」と少し不安にもなる。
でも、どの一本にも、手にした理由がある気がする。
たとえば、無地のマステ。
一見地味だけれど、重ねて貼ると奥行きが出る。
切手柄のマステは、旅ノートに貼ると物語の香りがする。
アンティーク柄は、少し憂鬱な日にもやさしく寄り添ってくれる。
人生も、マステのようなものかもしれない。
選んだつもりでも、思いがけず手にする色や模様がある。
それが最初は「好みじゃないな」と思っても、
ふとした瞬間に「これ、案外いいかも」と思えるときがくる。
無駄なものなんて、きっとひとつもない。
その時々の自分に合う色や柄がある。
それを見つけるのも、楽しみのひとつだ。
使うたびに、自分の世界が少し広がる
マステを貼る音が好きだ。
テープを引き出すときの、やわらかな摩擦音。
それは、心の中のざわめきを少しずつほどいてくれるような音。
1日の中でほんの数分でも、
「書く」「貼る」「整える」この時間があるだけで、
私は少しだけ自分を取り戻せる。
仕事、家事、育児――
いつも何かに追われる日々の中で、
マステと手帳に向き合う時間は、
自分の内側を“やさしく撫でるような時間”なのだと思う。
きっと、マステの幅1センチには、
私の「好き」がぎゅっと詰まっている。
そしてその「好き」が、私を少しずつ救ってくれている。
小さなときめきが、日々を照らす
マステを選びながら思う。
こういう“ちょっとした楽しみ”が、
日常の中に光をともしてくれているのだと。
どんなに忙しくても、
どんなに心が疲れていても、
好きなものを前にすると、少しだけ呼吸が整う。
今日もまた、どのページにどんな色を貼ろうかと考える。
それだけで、ほんの少し気持ちが軽くなる。
マステ40本。
たかが紙のテープ、されど小さな幸せ。
紙とペンとマステ。
この三つが揃えば、私はまた明日も書いていける。
今日も小さな養生を。
Wrote this article この記事を書いた人
ミカ
手帳と暮らすミカです。 薬剤師・和漢薬膳師として、心と体の「めぐり」を見つめながら暮らしています。 40代を迎え、心や体の声に耳を澄ます日々。 手帳を開く時間は、私にとって小さな養生であり、静かな儀式です。 ここでは、ほぼ日手帳に綴る日々の出来事や心の揺れを通して、 「人間らしく生きる」ためのヒントを探しています。