
雨の朝、足元の冷たさで始まる一日
雨の音で目が覚めた朝。
空気はひんやりしていて、カーテンの向こうの景色が少し白んで見えた。
いつものようにコーヒーを淹れて、パソコンの前に座る。
けれど今日は、指先が思うように動かない。
足元から伝わる冷えが、体の奥までじんわりと広がっていく。
この感覚、季節がひとつ進んだ合図だ。
今年は、子ども部屋を仕事スペースに使えず、
仕方なくリビングの一角にデスクを移動した。
本当は、こたつでぬくぬく仕事ができたらいい。
でも、そこは家族の団らんの場所。
遠慮しながら働くうちに、足先の冷えが気になるようになった。
エアコンをつけても、上半身ばかり温まって、
足もとはずっと氷のように冷たい。
気づけば、仕事への集中力も下がっていた。
肩がこり、頭がぼんやりする。
“寒さ”はただの気温ではなく、
心のリズムまで奪っていくものなんだと感じる。
温かい飲み物を用意しても、芯からはなかなか温まらない。
体の巡りが滞ると、気持ちまで固まっていく。
ふと、去年の冬を思い出す。
こたつでノートを書いていた頃は、
こんなに冷えを意識したことはなかった。
同じ家の中でも、
場所が変わるだけで体の感じ方はまるで違う。
小さな変化をおろそかにすると、
体は確実にサインを出してくる。
今の私にとって“冷え”は、
ただの季節の不調ではない。
暮らし方や働き方を映す鏡。
だからこそ、今年はちゃんと向き合おう。
そう思った、雨の朝だった。
冷えは“3つの首”を守ることから
冷えを感じるとき、まず意識したいのは「3つの首」。
手首、足首、首元。
ここを冷やさないことが、冬の基本の養生になる。
体の“巡り”は、細い通路のような首まわりを通って全身に広がっていく。
だから、この3つが冷えると、血流も気の流れも滞りやすくなる。
特にデスクワークでは、足首からの冷えが厄介だ。
椅子に座ったままの姿勢が続くと、
ふくらはぎの筋肉が動かず、血液が下にたまりやすい。
「動かない=冷える」は、在宅勤務の大きな落とし穴。
私は朝の仕事前に、必ずレッグウォーマーをはくようにした。
少し面倒でも、それだけで体感温度が変わる。
足首が温まると、肩や背中の力もゆるむ気がする。
首元にはストールを軽く巻く。
体を締めつけない程度に、やわらかく包むくらいがいい。
手首にはお気に入りのリストウォーマー。
パソコン作業中でも邪魔にならず、
小さな布ひとつで気持ちまで守られているような安心感がある。
冷えは、知らぬ間に体の奥に入り込む。
だから「冷えた」と感じる前に、温めておく。
それが冬を快適に過ごすための、ささやかな予防線。
3つの首を温めることは、
自分を労わる“サイン”でもある。
寒さの中で、自分の体に一度でも意識を向ける。
それだけで、1日の調子がやわらかく変わっていく。
エアコンでは足りない。デスク下の静かな味方
エアコンの風が届いても、足元はいつも冷たい。
空気は温まっているはずなのに、膝下だけが冬のまま。
デスクワークの冷えは、上半身と下半身の温度差がつくのが原因だと聞いた。
確かに、肩はじんわり温かいのに、
足先だけ氷のようになっている日が多い。
そんな日々が続いていたある朝、
私は思い切って、前から気になっていたパネルヒーターを購入した。
広告で見かけるたびに「本当に温まるのかな」と半信半疑だったけれど、
届いてすぐに試してみると、その静けさに驚いた。
音がしない。
風も出ない。
ただ、目に見えない熱が、じわじわと足元を包んでいく。

まるで、湯たんぽをそっと忍ばせたような穏やかさ。
エアコンのように乾燥もしないから、喉も痛くならない。
部屋全体を温めるよりも、
“自分の居る場所”を心地よく整えるほうが、ずっと省エネだと感じた。
それ以来、パネルヒーターは私の冬の相棒になった。
スイッチを入れて数分で、足先の冷たさがすっと引く。
静かなぬくもりが、仕事への集中を取り戻してくれる。
「体を温める」とは、単に温度を上げることではない。
自分が一番落ち着ける“温度”を知ることなのかもしれない。
体の声を少しでも聞けたとき、
その日の仕事は、ほんの少しやさしく進んでいく。
パネルヒーターを置いて気づいた変化
最初の数日は、ただの「足元が温かい」だけの満足だった。
けれど、1週間ほど経つころには、体の変化をはっきり感じるようになった。
まず、夕方の疲労感が減った。
いつもなら17時を過ぎると、足がむくみ、頭がぼんやりしてくる。
それが、パネルヒーターを使い始めてからは、
体が軽く、集中力が長く続くようになった。
エアコンの風で乾燥していた喉もラクになり、
夜の寝つきまで良くなった気がする。
「たかが足元の温度」と思っていたけれど、
体の底が温まると、全身の血の巡りまで変わってくる。
在宅ワークの冷えは、気づかないうちに体力を奪っていく。
とくに40代になると、
少しの冷えが、そのまま“だるさ”や“気分の落ち込み”につながる。
東洋医学では「冷えは陽気を奪う」と言われるけれど、
まさにその通りだと思った。
パネルヒーターの静かな熱は、
まるで体の奥の“陽”をゆっくりと呼び戻してくれるよう。
エアコンの強い風とは違う、やさしいあたたかさ。
「冷えを防ぐ」ではなく、「ぬくもりを育てる」感覚に近い。
小さな工夫が、自分の一日を穏やかに変えてくれる。
寒い冬を「我慢の季節」にしないために、
今年は、このあたたかい習慣を続けていこうと思う。
小さなぬくもりが、冬の集中力をつくる
足元が温かいだけで、心まで落ち着く。
そんな当たり前のことを、パネルヒーターが思い出させてくれた。
朝、スイッチを入れて、
机の下にじんわり広がる熱を感じる時間が好きだ。
温度というより“安心”に近い感覚。
そのぬくもりが、今日一日の仕事のリズムを整えてくれる。
温かさがあると、集中が続く。
冷えで体がこわばると、思考も固くなる。
体がゆるむと、心もやわらかくほどけていく。
“養生”とは、こういう小さな心身の調律なのかもしれない。
冬の仕事は、つい「頑張って乗り切ろう」と思いがちだ。
でも、無理をしても結果はついてこない。
自分の体をいたわる時間が、結局いちばんの生産性につながる。
足元にあたたかい光を置くこと。
お気に入りのブランケットをひざにかけること。
手を止めて、白湯をひと口飲むこと。
そんな些細な行動が、
冬の在宅ワークを「快適な時間」に変えてくれる。
外は冷たい風が吹いていても、
自分のまわりにひとつぬくもりを置けたなら、
その日を少しやさしく始められる。
今日も、パネルヒーターの小さな熱に守られながら、
私は静かにキーボードを叩いている。
パネルヒーターは、冬の在宅ワークの小さな投資。
自分の体を守るための“ぬくもり習慣”として取り入れてみるのもおすすめ。
今日も小さな養生を。
Wrote this article この記事を書いた人
ミカ
手帳と暮らすミカです。 薬剤師・和漢薬膳師として、心と体の「めぐり」を見つめながら暮らしています。 40代を迎え、心や体の声に耳を澄ます日々。 手帳を開く時間は、私にとって小さな養生であり、静かな儀式です。 ここでは、ほぼ日手帳に綴る日々の出来事や心の揺れを通して、 「人間らしく生きる」ためのヒントを探しています。
