
朝晩の空気が、少しひんやりしてきた。
季節がゆっくりと秋に向かっている。
でも、40代の体はその変化に敏感で、気づけばずっと「ダル重い」。
何となくやる気が出ない。家事をしても、頭がぼんやりする。
そんな日が増えた。
昔なら「気のせい」と笑ってやり過ごせたのに、今はそうもいかない。
無理をすれば、その翌日に必ずツケが回ってくる。
それでも日々の生活は待ってくれず、
子どもたちは「ママ、お腹すいた!」と元気に叫ぶ。
主婦に“休み時間”は、なかなか与えられないのだと実感する。
最近は、そんなときに「自分を甘やかすためのご褒美」を意識的に用意するようにしている。
疲れた心に、小さな光を差し込むために。
疲れた夜、ローソンに向かった理由
その日は、朝からずっと頭が重かった。
在宅勤務を終えたころには、もう何もしたくない気分。
家事もほどほどに済ませ、子どもたちも連れて夜のドライブがてら、ローソンへ向かった。
目的はひとつ。
「ゴディバ ショコラクレープ」。

SNSで見かけて以来、ずっと気になっていたスイーツ。
チョコ好きとしては見過ごせない存在だ。
棚に並ぶその金色のパッケージを見つけた瞬間、
心の中で小さくガッツポーズをした。
帰宅して、照明を少し落とし、温かいハーブティーを淹れる。
一日の終わりの小さな儀式だ。
包みを開けると、ふんわりとカカオの香り。
一口食べた瞬間、もちっとした生地と濃厚なチョコクリームが
口いっぱいに広がって、思わず目を閉じた。
ほんの数分の幸福。
けれど、この一口のために頑張れた一日だった。
「頑張りすぎない」ことも、ちゃんと頑張ることの一部なのだと思う。
ご褒美の記録を、手帳に残す
この小さな喜びを、私はいつも手帳に書き留めている。
ページを開いて、「今日のご褒美」と題をつける。
そこに、チョコクレープの写真を小さく貼り、
“濃厚で、ちょっとビターな味が今日の気分にぴったりだった”と一行添える。
それだけのことなのに、ページが一気に華やぐ。
疲れた自分をちゃんと労ったという記録が、
翌日を少し優しくしてくれる。
私はこの“書く時間”に救われているのだと思う。
日記をつけることは、
過去の自分を整えていく小さな養生でもある。
「無理をしない」ことを選べるようになった
若い頃の私は、どんな日も全力だった。
家事も仕事も、完璧にこなさないと気が済まなかった。
でも40代になって、体が少しずつ教えてくれるようになった。
「あなたが止まらないと、心も止まれないよ」と。
最近は、家事を半分にしても罪悪感を持たないようにしている。
外食の日が続いてもいい。
洗濯物が翌日にまわってもいい。
完璧を手放すことは、
私の中の「緊張」をゆるめるための養生だと感じる。
あの日のチョコクレープも、
まさにそんな「ゆるめる時間」の象徴だった。
糖分が体に染み渡るというよりも、
心が少しずつ溶けていくような感覚。
あれは、甘さという名の癒しだった。
40代の私が見つけた、“小さな幸せ”のかたち
「丁寧な暮らし」という言葉をよく耳にするけれど、
その本当の意味は“無理をしない暮らし”なのかもしれない。
手帳を開いて、
そこに貼られたチョコレープの写真を見つめるたびに思う。
私はこの夜、確かに自分を大切にできたのだと。
大それたことをしなくてもいい。
高級なレストランに行かなくてもいい。
コンビニのスイーツひとつで、心がふっと軽くなる夜がある。
あの夜、ローソンの帰り道で感じた秋の風は、
少し冷たくて、でもやけにやさしかった。
頬に触れるその風が、まるで私の肩を撫でながら
「よくやってるよ」と囁いてくれた気がした。
完璧じゃなくても、ちゃんと生きてる。
その証を、今日もまた手帳に書き残していく。
今日も、小さな養生を大切に。
Wrote this article この記事を書いた人
ミカ
手帳と暮らすミカです。 薬剤師・和漢薬膳師として、心と体の「めぐり」を見つめながら暮らしています。 40代を迎え、心や体の声に耳を澄ます日々。 手帳を開く時間は、私にとって小さな養生であり、静かな儀式です。 ここでは、ほぼ日手帳に綴る日々の出来事や心の揺れを通して、 「人間らしく生きる」ためのヒントを探しています。