
朝から、低い雲が空を覆っていた。
窓の外はどんよりと暗く、
雨の音が止む気配もない。
こんな日は、決まって体の調子が悪い。
頭の奥が鈍く痛み、
肩は凝り固まり、
体が鉛のように重たい。
気づけばため息ばかりが出る。
顔がむくんで目が腫れ、
体の内側から湿気が滞っているような感覚。
心までも水の底に沈んでいくようで、
「何もしたくない」が、
ゆっくりと体の中に広がっていく。
私は昔から気圧の変化に弱い。
天気予報よりも早く、
体が「雨が来る」と知らせてくる。
これは、東洋医学でいう“水滞”。
体の中の「水」の巡りが悪くなり、
重だるさや頭痛、気分の落ち込みを招く状態だ。
「できない日」を受け入れる勇気
40代に入ってから、
この不調が長引くようになった。
薬を飲んでもすぐには治らず、
痛みがじんわりと続く。
朝の家事をなんとか終え、
子どもたちを見送ったあと、
パソコンの前に座る。
でも、まぶたが重く、
頭の奥が締めつけられるように痛む。
昔なら、気合いでどうにかしていた。
けれど今は、体の限界を感じたら
「今日はやめよう」と思えるようになった。
横になりながら、
「怠けてる」なんて思わなくなった。
体が発するSOSを
ちゃんと受け取ることも、
立派な“生き方”のひとつだから。
雨の日の養生ルール
無理をしない日には、
小さな整えごとをして過ごす。
たとえば、温かい飲み物を用意して、
首と足首を冷やさないようにブランケットをかける。
窓辺に座って、
ぼんやりと雨を眺めるだけでもいい。
それから、
お気に入りの香りを漂わせる。
ラベンダーの穏やかさ、
ペパーミントのすっきりした清涼感。
頭痛で何も考えられないときでも、
香りだけは心をゆるめてくれる。
そして、夕方になったら、
少しだけ動く。
洗濯物をたたむ、
子どもの学校で汚してきた服を洗う、
小さな“やること”をひとつだけ。
「それだけでもう十分」
そう言い聞かせながら、
自分を甘やかす。
「やらなきゃ」より「いま、どうしたい?」
気象病に限らず、
体調が悪い日ほど
「やらなきゃ」が頭を占めてしまう。
でも、そんな日はあえて問い直す。
「私は、今どうしたい?」
横になりたいなら、横になる。
泣きたくなったら、泣く。
少し元気が出たら、
お気に入りのマステを選んで手帳を開く。
何も書けなくてもいい。
手を動かすだけで、
心の中に風が通るような気がする。
体の天気と、心の天気
気象病と付き合ううちに思う。
私の体にも“天気”があるのだと。
晴れの日もあれば、雨の日もある。
曇りの日だって、きっと悪くない。
そんなふうに自分の天気を受け入れることが、
今の私にはちょうどいい。
無理をしない日を選ぶことで、
また次の日の自分が動ける。
体を整えることは、
未来の自分を助けることなんだと思う。
台風の気配を感じる夜。
窓の外で風が唸っていても、
私は静かに白湯を飲む。
ゆっくり深呼吸して、
心にひとつ余白を残す。
明日は少し晴れ間が見えるだろうか。
そう思えるだけで、
今夜はもう十分だ。
今日も小さな養生を。
Wrote this article この記事を書いた人
ミカ
手帳と暮らすミカです。 薬剤師・和漢薬膳師として、心と体の「めぐり」を見つめながら暮らしています。 40代を迎え、心や体の声に耳を澄ます日々。 手帳を開く時間は、私にとって小さな養生であり、静かな儀式です。 ここでは、ほぼ日手帳に綴る日々の出来事や心の揺れを通して、 「人間らしく生きる」ためのヒントを探しています。