休日の昼、夫婦でいつものそば屋へ
久しぶりに、夫とふたりでランチに出かけた。
行き先はいつものそば屋さん。
昔ながらの佇まいなのに、どこかおしゃれで落ち着いた雰囲気がある。
ランチしか営業していないので、行けるのはおやすみの日だけ。
それもまた、少し特別に感じる理由のひとつだ。
この店に来るのは、決まって休日の昼。
私たち夫婦は、休みが合うと新しいお店を探して出かけるのが習慣になっている。
お互い気になっていたお店を言い合って、
その日の気分で行き先を決める。
結婚して十数年経っても、そんな小さな楽しみが続いているのが嬉しい。
この日は、少し風邪の引きはじめ。
娘の咳をもらったのかもしれない。
のどの奥が少しイガイガして、声が出づらかった。
だからこそ、温かいそばを食べたくなったのかもしれない。
店に入ると、そばの香りがふんわりと漂ってきた。
窓から差し込む秋の日差しが柔らかくて、
「今日ここに来られてよかった」と思った。
季節のそばと、ゆずの香り
私はいつも、少し太めの「田舎そば」を頼む。
うどんのような太さで、噛み応えがしっかりしている。
はじめて食べる人はきっと驚くと思う。
この店の田舎そばは、素朴で力強い。
一口ごとに、体がほっと温まっていくような味がする。

もうひとつのお楽しみは、日替わりの玉焼き。
今日は、たらことブロッコリー入りだった。
ふんわりと焼かれた卵の中に、たらこの塩気とブロッコリーの甘み。
そして横には、赤大根のおろし。
見た目はかわいらしいのに、ひと口食べるとツンと辛くて、
それがまた卵焼きにぴったり合う。
この店に来るたび、「今日の玉焼きは何かな」と小さなわくわくが生まれる。

夫は季節限定の“ゆずそば”を注文した。
さらしなそばにゆずの皮が練り込まれていて、
見た目は少しだけ淡い黄色。
冷たいそばをすすった瞬間、
爽やかなゆずの香りがふわっと鼻に抜けていく。
香りだけの雰囲気ではなく、
口に入れるとしっかりとゆずの風味が広がる。
「やっぱり、ここのそばが一番だね」
そんな会話をしながら、
二人で顔を見合わせて笑った。
蕎麦屋さん巡りをしようと言いながら、
気づけばいつもこの店に戻ってきてしまう。
それもまた、わたしたちらしい休日だと思う。
季節の変わり目、風邪の予感
おそばを食べているときから、
のどの奥にほんの少し違和感があった。
ヒリヒリするほどではないけれど、
「あ、これは風邪のサインかもしれない」とすぐに気づく。
季節の変わり目になると、
決まって体が敏感に反応するようになった。
40代になってから、
“ちょっとした不調”を見逃さないことが、
自分を守るいちばんの方法になった気がする。
この日は帰宅してすぐにうがいと手洗い。
加湿器も出して、部屋の空気を少し潤わせた。
ここ最近は、補中益気湯を毎日飲んでいる。
疲れを癒すためでもあり、
風邪を寄せつけないための小さな習慣だ。
幸い、翌朝にはのどの痛みも落ち着いていた。
少し早めに気づいて、
早めに整えることができたからだろう。
「これくらいなら大丈夫」と思っていた昔より、
今はずっと、自分にやさしくなれた気がする。
無理をするより、ひと息ついて整える。
そのほうがずっと、
長く元気でいられると知っているから。
何気ない日常が、いちばんのごちそう
店を出ると、秋の空気が頬に触れた。
澄んでいて、少しだけ冷たくて、
深呼吸したくなるような匂いがする。
駐車場までは少し距離がある。
食後の散歩にはちょうどいい。
夫と並んで歩く道のりが、
この日の中でいちばん印象に残っている。
何か特別な話をするわけではない。
ただ「今日は美味しかったね」と言い合うだけ。
それなのに、心の奥に静かな満足感が広がっていく。
秋の午後の日差しが柔らかくて、
遠くの山がうっすらと金色に染まっていた。
その風景を見ながら、
「こういう時間こそが、いちばんのごちそうだな」と思った。
忙しい日々の中で、
つい“何かを得よう”と頑張ってしまうけれど、
本当の幸せは、
こうして穏やかに過ごす時間の中にあるのかもしれない。
夫婦で同じ景色を眺め、
季節を感じながら歩く。
それだけで、心が静かに整っていく。
今日も小さな養生を。